ベルリン1933

  • 理論社 (2001年2月1日発売)
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感想 : 22
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今年岩波少年文庫から、一部改訳された本作が分冊で出版されたが、これが手元にあったので(随分長いこと積ん読していた)読んだ。
いやあ、分冊正解。寝転がって読む私が悪いが、重たくて重たくて。装丁は上品だし、写真も当時を写したものがたくさんはいっていて、とてもいい本ではあるのだけど、YAというよりは一般向けの雰囲気だなと思う。値段も高買ったが、理論社としては精一杯やっていたと思う。しかし、少年文庫で上下巻なら、その方がいいな。
舞台は第一次世界大戦中から戦後にかけてのベルリン。敗戦で凄まじい不況に陥ったことは知っていたが、ドイツに革命があったとは、恥ずかしながら知らなかった。ローザ・ルクセンブルクは知ってたんだけど。
植民地政策の失敗と戦争のツケを負わされることに堪忍袋の緒が切れた兵士と民衆が蜂起し、皇帝を追い出したまでは良かったが、社会民主党と共産党に分裂してしまったために、革命は失敗に終わってしまう。
主人公の少年ヘレ(ヘルムート)の目を通して、貧しい庶民がどう考え、どう行動したかが描かれている。
同じ国民に銃を向け、首謀者を虐殺するなんて今では考えられない、とは思えないところが悲しい。香港の民主化運動やアメリカの人種差別反対運動を連日ニュースで目にする。一体百年前と今とどれだけ違うのかと。
また、同じ庶民でも感じ方考え方に違いがあり、なかなか一本化するのは難しいのも同じ。
主人公一家はとても貧しく(子どもがいつもお腹を空かせ、栄養状態や衛生状態が悪いため病気になりやすいのは、いつの時代も変わらない)、父は従軍して片腕を無くしており、母も工場で危険な肉体労働をしている。政府要人や元貴族は豊かな生活をしているのに、庶民は赤貧洗うがごとし。しかも、ロシアでは革命が成功し、労働者が政権を握ったとくれば、ドイツの労働者も、革命を!と思うのは当然だろう。
その後のドイツがどうなったか、ソ連がどうなったか知っているだけに、この時革命が成功していても、素晴らしい時代がやってきたとも思えないが、主人公一家の思いは十分共感できた。
1933でナチス政権となり、1945でまた敗戦となることは分かっているが、読んでいこうと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年6月14日
読了日 : 2020年6月14日
本棚登録日 : 2020年6月14日

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