思いはいのり、言葉はつばさ

著者 :
  • アリス館 (2019年7月25日発売)
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本棚登録 : 277
感想 : 23
3

日本語で書かれた児童書で、中国が舞台で中国人の少女が主人公というのが希で、さらに女書(ニュウシュ)が扱われるのは初めてだと思う。
それ自体とてもいいし、装画(まめふく)も可愛いし、読みやすい。
いい条件が揃っている。
しかし、残念な本だった。
子ども向けでも、もう少し具体的なことを書いてほしい。時代はいつなのか、場所はどこなのか。どんな家に住んでいたのか。その土地では珍しくなかったとはいえ、異民族なのに父母はどうして結婚しかのか。女書はそもそも女性が教育を受けられないからできたわけだし、主人公が纏足していたりするわけで(そのわりに非常に活発で明るく、今の女の子に近いメンタリティで子どもは感情移入しやすいだろうけど)、教育も受けられず、家事労働を担い、見知らぬ人と結婚し、結婚してしまえば婚家の言いなりになるしかなかった時代の女性の姿が、一応書かれてはいるけれど、軽いというか、浅いというか。
特に近所に住む主人公の友人、漢民族夫婦の娘のジュアヌは、貧しさから漢民族なのに纏足もしてもらえず(当時の感覚では、ちゃんとした家の娘は纏足してたわけだから)、家庭円満で経済的に余裕のある主人公に嫉妬しているようなシーンがあるので、そこのところをもっと描くのかと思っていたが、それ以上のつっこみはなし。
知らないところに嫁に行かされるシューインや、一揆を起こして捕まった男の息子シュウチー、高い教養がありながら世捨て人のような生活をしているグンウイなど、登場人物の役者は揃っているのに、とにかくつっこみ不足なんだよ!
文章の量や難易度(対象年齢)などに制約があったのかもしれないが、せっかくのいい題材を活かしていないのが残念すぎる。
この題材なら対象年齢を上げて、もっと書き込んだ方が面白いのに。
★3つなのは、題材がいいからで、内容は大いにもの足りず、★2つ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年8月16日
読了日 : 2019年8月16日
本棚登録日 : 2019年8月16日

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