「屈託」は色川武大が作中よく用いる言葉だし、彼の文学をよく表していると思う。
「屈託」意味―
1 ある一つのことばかりが気にかかって他のことが手につかないこと。くよくよすること。
2 疲れて飽きること。また、することもなく、退屈すること。
例えば色川は頭のかたちが悪くて、子供のころでんぐり返しをこばんだというエピソードが出てくる。
これも屈託、だけど他人には何のことやらわからない。
だけでなく、自分自身だって何にこだわっているのかそれはわからないが、どうしてもこだわっているってなことがあると思う。
こだわりと退屈という意味が同居しているのが、この言葉のおもしろいところだと思う。
こだわりって実は退屈なことだ。家のなかにひたすら穴を掘ったところで、それでどうなるってもんじゃない。自分でも分かってる。でもそうせざるをえない。その予定調和が退屈だ。
人のこだわりなど、他人からすればなおさら退屈なことにちがいない。「何をこだわっているんだ、こいつは」それは他人にはわかりっこないから、こだわりで来られると意思の疎通なんてできっこない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説(日本)
- 感想投稿日 : 2014年10月31日
- 読了日 : 2014年10月29日
- 本棚登録日 : 2014年10月31日
みんなの感想をみる