青 (百年文庫 77)

  • ポプラ社 (2015年1月2日発売)
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本棚登録 : 75
感想 : 15
4

・堀辰雄「麦藁帽子」
夏の青さ。「この夏休みには、こんな休暇の宿題があったのだ。田舎へ行って一人の少女を見つけてくること。」というのがいい。
「私」は年少のころ過ごした田舎へ行き、「お前」の兄たちと過ごす。
少年の奥手な恋と、挫折と後悔にまみれながらの奇妙な明るさ!

・シグリ・ウンセット「少女」
デンマーク、ノルウェー。はじめて読んだ。
訳がこなれていないせいか、うまく入りこめず。
少女の親友同士の友情と、そのあいだに横たわるぎこちなさ浅薄さ。
子供の世界は大人のそれよりも厳格な「法」によって縛られている気がする。言葉のボキャブラリーのないせいか、行動が行動を呼び起こしすれちがいが大きくなる。シーフとエルナが小さい男の子の関心を競争するところに表れているような。
大人なら中間を見つけだすか、ふたりのあいだの溜ったテンションをどっかほかに逃がす、その場を見つけられる。しかし子供の場合には力の捌け口がないために、ぴったりくっつくかそれとも離れるか、結局はその二択だ。とりわけ女の子の場合は…。

・グラツィア・デレッダ「コロンバ」
イタリア・サルデーニャ島。
上の「少女」と同様に、家柄の貧富の差があつかわれてる。
アザールは教師になったばかりだが婚約した都会の女に逃げられ失意のなか、友人で金持ちのムラスと実家に戻る。
アザールは近所の娘コロンバと互いに恋心を抱きあうが、「教師」と「羊飼い」では身分が違い、添い遂げることができない。
夜の森のなかで、ふたりが不器用な交信をつづけるところなんかダントツの青さだな。
都会の虚ろさ浅薄さと、コロンバのまっすぐな野性的な愛の対比がまぶしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年7月21日
読了日 : 2013年7月21日
本棚登録日 : 2013年7月21日

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