グッドラックららばい (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2005年6月15日発売)
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家族で食卓を囲むことが少なくなった。

「個食」と言われ、1人で食べる時が増え、中食(なかしょく…持ち帰り惣菜・弁当)産業が発達し、家庭の食卓に日本食、中華、イタリアン、フランス料理風とごちゃごちゃ並べられる時代だ。

例えば、朝から肉まんと焼きそば、とりから揚げにポテトサラダなんて…。

そんなゴタゴタ感の物語が『グッドラックららばい』。

導入部、娘の高校卒業の式に出席した帰りに突然蒸発してしまった母がいる。式服姿にハンドバックひとつで。

このことを知った家族、まじめでおとなしい父、我関せず手前勝手な姉、中学生だけど甘ったれでおこりんぼの妹が織り成す驚きと戸惑いは、笑わされる。ここは平安寿子の筆が冴える。

さて、何年も帰ってこない母。母は何処へ行ったか、残された家族はどうしたか?

それぞれが個性的にその後をたどるのだが、もうその個性が半端じゃない。共通しているのはみんな自分のことばかり、わががま勝手にふるまう。モラルなんてそっちのけ。

日本の朝食は「味噌汁にご飯、のり、納豆、佃煮、漬物」か、せめて「トーストにコーヒーミルク、目玉焼きと生野菜」にしたいよ。そうしないと調和が取れないのではないか。そう、食卓が美しくないのだ!と言うはやすいが、それは浅慮。

てんでばらばらの人生をたどって過ごす人達、でも家族、されど家族。ごちゃごちゃっとした経過をユーモアたっぷり、「知ったこっちゃない!」とうそぶく、ふてぶてしい作者平安寿子であった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2006年
感想投稿日 : 2021年9月4日
読了日 : 2006年4月20日
本棚登録日 : 2021年9月4日

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