こうばしい日々 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1995年5月30日発売)
3.40
  • (233)
  • (404)
  • (1138)
  • (94)
  • (9)
本棚登録 : 5384
感想 : 356
3

いまごろという感じで遅れて読んだのだが、タイミングがあったというのだろうか。

長崎の事件に関連して、あの頃を思い出してしまった。
5~6年生ころ。こどもなんだけどわかっている年頃。

「こうばしい日々」が男の子「ダイ」の気持ち。
「綿菓子」が女の子「みのり」の気持ち

江國さんの文章、文脈は魅力的である。
本当は雑多で無味乾燥な日々のことどもを幻想的とさえいえる、しっとりした雰囲気をかもして書いている。技だろう。

家族がいて、愛があってもひとりでに歩き出してしまう自分いる。
こわれそうで傷つきやすいものの、硬質なこころが溶けなくて。
でも、知って欲しいような、認められたいような!

それをやさしく包むようにいとおしんで描き分けて下さる。
そうして江國さんの世界は理解してくれる人がそばに居ることがわかってハッピーになる。

江國さんの小説はまわりに江國さんの分身が居るからいいのだ。
現実はなかなかそんなひとがいないこと、そうでないことだ。

ところで、江國さんの本は2冊めだけど、脇役(つまり江國さんの分身)にすごーく魅力的な人が多い。

とり上げると切りが無いくらい。登場人物全部になってしまう。

「こうばしい日々」の日本びいきのウィル。パパの同僚の島田さん。給食のおばあさんパーネルさん。
「綿菓子」のおばあちゃん。引っ越していった同級生のみほ。

そんなひとたちが主人公をつつむ。
だから和めるのだけど。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2004年
感想投稿日 : 2021年9月14日
読了日 : 2004年6月6日
本棚登録日 : 2021年9月14日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする