エレジーは流れない

著者 :
  • 双葉社 (2021年4月21日発売)
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のどかでさびれた餅湯温泉商店街。
高校2年の怜は、その一角で土産物屋を営む家に暮らす。
店を手伝い、家事もして母を助けている。
さらに怜にはもうひとり母親がいて、ふたりの間を行き来し、父親がいないという複雑な家庭環境だ。
小さい頃からそれが当たり前だと思って育ち、友人たちの家庭との違いに気がついた後も、自分を大切にしてくれる母たちにその理由を聞けないでいた。

ひとにどう思われようと、気にせず奔放に生きる友人やまわりの大人たち。
でも怜は「なにが無難か」を常に考え、相手に気を使ってしまい、とても奔放になど生きられない。
夢も打ち込みたいこともない。
そんな自分が、これでいいのかと悶々とする。

次々と起こる騒動に振り回されながら、やがて進路選択の時期を迎え、
「なりたいものはないのか?」と問われて…

『夢なんかひとっつもない! ただ毎日なるべく平穏に生きていきたいだけなのに』
『なんで歌とか漫画とか大人はすぐ夢の話すんだよ、夢も希望もないのがそんなに悪いのかー!!!』

怜が叫ぶ。


今や若者だけでなく中高年でさえ、「挑戦する気持ちが大事」とか「いくつになっても夢を持とう」と言われる。
夢を持っていない人はダメだと言われているようで、特に夢も持たずに生きている自分に罪悪感すら感じていた。
でも、日々平穏に暮らしたいと思って生きる、夢はなくてもそれだけでいいじゃないか!

個性的な登場人物たちと怜が繰り広げる日常は、まさしく青春真っ只中。
懐かしさと愛おしさが心を満たした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 青春小説
感想投稿日 : 2023年3月17日
読了日 : 2023年3月15日
本棚登録日 : 2023年3月15日

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