それほど遠くない先に「女のいない男たち」になるのが決定的になったので手にとってみた。
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羽原にとって何より辛いのは、性行為そのものよりはむしろ、彼女たちと親密な時間を共有することができなくなってしまうことかもしれない。
女を失うというのは結局のところそういうことなのだ。現実の中に組み込まれていながら、それでいて現実を無効化してくれる特殊な時間、それが女たちが提供してくれるものだった。
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この感覚。これが失われることの辛さが身に迫ってくるのだ。これからしばらく、この感覚を身に染み込ませる期間が続くことになるが、その感覚に襲われてもそれを転嫁して深みのある男に仕上げることもできるし、巷に溢れる「女のいない男たち」になってしまうこともできる。それは世間の眺め方と自分の見つめ方にかかってくる。
でも、この小説は「女のいない男たち」の行く末をこのように描く
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ひとたび女のいない男たちになってしまえば、その孤独の色はあなたの身体に深く染み込んでいく。淡い色合いの絨毯にこぼれ落ちた赤ワインの染みのように。あなたがどれほど豊富に家政学の専門知識を持ち合わせていたとしても、その染みを落とすことはおそろしく困難な作業になる。時間とともに色は多少褪せるかもしれないが、その染みはおそらくあなたが息を引き取るまで、そこにあくまで染みとして留まっているだろう。
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この姿もリアルに想像できる。というより巷にあふれる「女のいない男たち」の姿のデフォルトはこういう状態なのだ。
だとしたら覚悟を決めるか。
- 感想投稿日 : 2020年8月14日
- 読了日 : 2020年8月14日
- 本棚登録日 : 2020年8月12日
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