それでも、読書をやめない理由

  • 柏書房 (2012年2月1日発売)
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本棚登録 : 445
感想 : 41
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200ページのほぼ全てにおいて、『読書』に関しての様々な考察が綴られている。『読書』を自分の経験をとおして、自分が読んできた著者の言葉をとおして、あるいは自分の息子が本に向き合う姿をとおして、あるいは読書し経過する時間との関係性を感じながら、はたまた読書している自分自身の姿を俯瞰しながら。そのときどきに映し出される『読書』の多様で深みのある魅力を語り尽くしている。

読み終えた今、この本を振り返っても、よくもこれだけ『読書』だけをテーマにして語り続けることができるものだと思ってしまうし、最後まで読み終えかつ、★を5つけてしまうほどに、心の奥深くに共感がコダマする文章が素晴らしかった。
それを思うと著者デヴィッド・L・ユーリンの筆力だけでなく、翻訳した井上 里さんの言葉の選択が見事に著者の意図に調和して美しかったのだとつくづく感服してしまう。

著者がこの本を書き終えたときに掬いとった『読書』の姿を引用しておきます。

『わたしたちが物事に向き合わないことを何より望んでいるこの社会において、読書とは没頭することなのだ。読書はもっとも深いレベルで私たちを結びつける。それは早く終わらせるものではなく、時間をかけるものだ。それこそが読書の美しさであり、難しさでもある。なぜなら一瞬のうちに情報が手に入るこの文化の中で、読書をするには自分のペースで進むことが求められるからだ。
時間をかけて本を読むというこの考えは、いったい何を意味しているのだろう?
もっとも根本的には、それによって私たちはふたたび時間と向き合う、ということだ。
読書の最中には、私たちは辛抱強くならざるを得ない。ひとつひとつのことを読むたびに受け入れ、物語に身をゆだねるのだ。さらに私たちは気づかされる。この瞬間を、この場面を、この行を、ていねいに味わうことが重要なのだ、と。
世界からほんの少し離れ、その騒音や混乱から一歩退いてみることによって、私たちは世界そのものを取り戻し、他者の精神に映る自分の姿を発見する。そのときわたしたちは。より広い対話に加わっている。その対話によって自分自身を超越し、より大きな自分を得るのだ。』

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年4月25日
読了日 : 2018年4月25日
本棚登録日 : 2018年4月25日

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