最初から最後まで、多幸感にあふれたフリーターのジーモン君とその兄弟姉妹、またその他関係者が熱に浮かされたようにしゃべり続け、大きなドラマは起こらずジーモン君が変わることもない。それなのに読んでいるこちらの気持ちがじわじわと変化する、奇妙な小説だった。初めは「橋田寿賀子か!」とイライラし、次は「これはもうどうしても駄目にならざるを得ない人の悲しい話か」としんみりし、最後は「ジーモン君は選ばれし人だよ」と。半分以上読むまで面白くなってこなくて時間がかかったけれど、読んでよかった。
駄目と駄目じゃないの狭間でふらふらしている気持ちのときに読むと、ヘドヴィヒの言葉がことごとく抉ってくる。ヴァルザーは駄目人間を表現する言葉が実に豊かで味わい深くて、カフカがヴァルザー読みだったという話に納得した。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ドイツ - 作品集
- 感想投稿日 : 2014年1月1日
- 読了日 : 2014年1月1日
- 本棚登録日 : 2014年1月1日
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