この女

著者 :
  • 筑摩書房 (2011年5月11日発売)
3.60
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本棚登録 : 938
感想 : 221

137:「僕」の語りの上手さと、テンポのよい関西弁、そして突き抜けた登場人物たち。「妻の小説を書いてほしい」と依頼された青年、甲坂礼司(=僕)と、小説の主人公となる掴みどころない女、二谷結子。結子の過去、人となりに触れていくうちに浮かび上がる陰謀。ミステリとまではいかないけれど、ときに痛快、ときにしんみり、と絶妙の配分で進む物語は、礼司の秘密が明かされたあたりから多様な意味、彩りを帯びてラストシーンに向かいます。
最後まで読んで、えらい中途半端やなと思ったのですが、作品のテーマはすでに語られていて、投げっぱなし? と思わせたところもよく読めばちゃんと描かれていて、きちっとまとまった小説「この女(=二谷結子)」であり、「この男(=甲坂礼司)」である、という構成にまた感じ入ってしまいました……。派手さはない、癒しとか許しとか、あざとさもない。でも、確かに残るものがある。強いて言えば「再生」なのかな。あるいは「再出発」。やっぱり森作品すごいわ……!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2018年10月8日
読了日 : -
本棚登録日 : 2018年10月8日

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