無限抱擁 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社 (2005年8月11日発売)
3.50
  • (2)
  • (4)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 41
感想 : 6
3

恋をするから小説の題材が生まれるのか
それともわたしは小説の題材を得るために恋をしているのか
そんな問題がはっきり取りざたされるようになるには
堀辰雄の「風立ちぬ」を待たねばならない
しかし滝井孝作が「無限抱擁」を書いた時代にも
その問題は、漠然とした不安として作家を苛んでいたようである
「無限抱擁」とは、いってみればつまり
信頼と疑いで無限に形成される入れ子構造のようなものだ
「愛されている」という信憑が
「愛されてない」という疑念に覆われたならば
それはまた「愛されている」という信憑で
覆いかくされなければならない
永遠に繰り返されるそんな作業が、ここでは
作中作の中にまた作中作があるという形で表現されている
しかしそれも所詮はごまかしの思い込みにすぎない
そのことが、妻の死によって、残酷にも明らかにされていく

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年12月17日
本棚登録日 : 2016年12月17日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする