僕とおじいちゃんと魔法の塔(1) (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2010年1月23日発売)
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本棚登録 : 2503
感想 : 242
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この作者らしい世界観と考え方が分かる作品でした。
自立と自由について、そして物の捉え方の柔軟さについて、考えさせられ教えられる気がします。
思春期やそのちょっと前の子供達にも分かりやすく書かれているので、一度読んでみると良いかな。大人は、つい自立しようとする子供から、ちゃんと子離れ出来るようにしなくちゃ、です。

大人になるとわかるのですが、学校で学ぶ事柄は結局は事柄でしかなくて、それをどう活かすかが本当の勉強だと、私も思います。そして、人生はいつも勉強だと常々思いますが、結局、自分の周りで起こる事柄から、何を感じて自分がどう生きるかを考えることが本当の勉強なのでしょう。

障がい者については、ちょっと偏った描き方をしていると思いますが、世の中にはこういう風に間違っている人が確かにいます。龍神のような行動は確かにきちんと伝えないと理解されにくいし、それに対するクラスメイトの対応も「ある、ある」と思ってしまいます。小学校高学年、中学生くらいの子供達には、この部分を読んで考えてもらいたいです。
いじめの仕組みについても分かりやすく書かれていて、優しさという言葉を盾にいじめをする、人間の善人性って・・・。ここは人間として間違えてはいけないと思います。
この作者の別の作品に『地獄への道は、善意で舗装されている』という言葉が出てくるのですが、うん、自分も間違えないで生きようと改めて思います。

龍神が自立していく過程は、小気味いいです。応援したくなります。
実際の世界で考えたら、確かに小学校6年生ではちょっと早いし、有り得ないと思うけれど、それでもいつかは人は自立しなくてはいけない。
ただ、実際には、気持ちの上では自立していても、完全に家族のしがらみから切り離されては生きていけないのも世の中なのですけれどね。それはそれで、別の話なので。
子供向けに書かれた作品に加筆修正して出版されたそうで、文庫以外でも出版されても良いのに、と思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童文学
感想投稿日 : 2012年6月24日
読了日 : 2012年6月24日
本棚登録日 : 2012年6月24日

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