わたしが行ったさびしい町

著者 :
  • 新潮社 (2021年2月25日発売)
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本棚登録 : 158
感想 : 13
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220607*読了
江國香織さんの講演会で、2021年に読んだおすすめの本として紹介されていたのがこの本。
うらやましいほどにたくさんの国、町を訪れられていて、いかにも観光っぽい場所にももちろん行かれている。
でも、ここで綴られているのは、「さびしい」町。
この「さびしい」というのは、わざわざ訪れたのに見たいものが見れなかったり、人気がなかったり、果てしない道のりを車で運転してやっと辿り着いた町がうらぶれていたり…。
そして、地域色はあるものの特徴に乏しい「普通」の町だったり。

江國さんも印象的なシーンとしてあげられていた、ナイアガラフォールズ事件は、この連載の初回、この本の冒頭の町に選ばれているだけあり、私の心にも深く残っています。

私が思い出す「さびしい」町は外国だと、真冬のフィンランドのロバニエミ。
氷点下25度、あたり一面雪で覆われた道路を肩をすくめて渡る人。さびしいショッピングモール。

そんな、読み手にとってのさびしい町を思い出させてくれる本でもあります。

松浦さんは大学の教授をされていたし、詩人でもあり、小説家でもあり、書き続けてこられた人。
そんな人ならではの豊富な語彙で語られる「さびしい」町は、確かにさびしいんだけれど、行ってみたくなります。
賑やかな観光地も素敵だけれど、そのすぐ近くにそっとある「さびしい」町にも訪れたい。
記憶に蘇る「さびしい」町って、なんだかとても愛おしい。

雨の降る日にお家にこもって読みたい本だなぁ。

江國さんに教えていただけたからこそ、知って読めた本。そのご縁に感謝。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年6月7日
読了日 : 2022年6月7日
本棚登録日 : 2022年6月7日

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