歴史入門 (中公文庫 フ 14-1)

  • 中央公論新社 (2009年11月24日発売)
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自らの著作「物質文明・経済・資本主義」を紹介する1976年の講演を元にした本。ちょっと取りつき難い大著の要点が、薄い文庫本にまとまっているのは有難い。しかし、「その要点が良く理解できましたか?」と問われると、それはまた別問題。30年超を隔てているせいか、日仏の差か、何か大事な前提を理解せずに読んでいる気がする。マルクスとか?

テーマは15〜18世紀の世界史。西欧中心だが、日本・中国・インドも少しだけ視野に入る。

歴史の背後にある「長期持続」に焦点をあてる。
⇒言わんとする所は何となく分かるが具体的にはムツカシイ。
「日常性の構造」「物質生活」・・・意識には上らないが、人間が腰の上まで漬かっている。人口、病気、食物、技術、そして貨幣と都市。ユングの集合的無意識みたいな心性史までいきたかったが言及できなかった。

市・大市・取引所
市の門をくぐると「使用価値」に加えて「交換価値」が生じる。・・・経済生活、しかし18世紀までは経済生活外の自家消費の世界の占める割合は非常に大きかった。
⇒素朴な市が発展して、大商人による独占になり、資本主義へ。このあたりがイマイチ理解できず。
ヨーロッパ以外との比較・・・日本は交換の上位の段階がヨーロッパに次いで発展していた。中国は原始的な段階のままで充足。⇒国土の問題?分権的な封建主義による?

「市場経済」と「資本主義」を別物として区別する。
資本蓄積。アンシャンレジーム期のフロー:ストック=1:3〜4。
市場経済A(非資本主義):透明な交換、ほどほどの利益、仲介者は少ない
市場経済B(資本主義的):「流通の領域」、プライベートマーケット、商人の長い連鎖→莫大な利益、資本蓄積

資本主義発展の条件・・・ウェーバー批判
社会秩序の一定の平穏さ、国家の中立性ないし脆弱性ないし好意→私有財産の数世代にわたる蓄積
ここでも日本の類似性を指摘。中国、インドは君主の権利が強すぎ。
資本主義が階層を発明したわけではない。しかし大きな問題意識は、、、<blockquote>階層は、人間同士の従属関係は、打ち壊されねばならないのだろうか?p.98</blockquote>

世界時間⇒よくわかりません
世界経済(グローバル経済)≠世界=経済(地域的な経済世界)
中心化&脱中心化、ヨーロッパの中心の変遷・・・1380年代〜ヴェネチア、1500年代〜アンヴェルス、1590-1610頃〜ジェノヴァ、1650-1660頃〜アムステルダム、1780-1815頃〜ロンドン。
北ヨーロッパはコピー商品などで力づくで地中海世界から覇権を奪ったと。
中心に対して辺縁が貧しくなる、搾取される。同心円状に異なる経済段階が共存。
イギリスに至ってはじめて、それまでの都市国家による経済から国民経済へ。
なぜイギリス?→それは難しいよ。現代でも経済的に離陸できない低開発地域があるくらいだし。・・・地方から人口が流出しても生産能力が失われず、新産業は充分な労働力を見出せた。国内市場は物価高騰にもかかわらず発展。技術革新。外国市場。木綿産業のブームが終わった後も、資本は速やかに鉄道に移動した。国民経済全体の、基底の経済の活力による発展。

最後の資本主義論はよく分からん。資源と機会の搾取。合法的独占。

最後により定量的な歴史学への希望を述べて締め。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2018年11月5日
読了日 : 2011年7月21日
本棚登録日 : 2018年11月5日

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