富山先生のご著書を拝見すると、とてもドライな方だという印象を受ける。しかし、富山さんが産業再生機構(政府系の再生ファンドね)のCOOに就任された時、高給を蹴って富山さんの下に馳せ参じた方が少なからず居たという。
本書も「俺って仕事は余り。。。」って方には、将にハル・ノート的なご著書だと思う。何せタイトル通り「非情にやれ」ということであるからだ。
富山さんは言う。情緒に流れた選択が日本をダメにしたというのだ。例えば上記のハル・ノート。これは皆さんもご存知の通り、米国から「我が国と和平条約を結びたかったら、中国から完全撤退しろ」というものだった。
このハル・ノートによるサンクコスト(埋没費用)は英霊20万人。当時の軍部は「英霊20万人を無駄にするのか~?」ということで、日米開戦を行い、結局日本は敗戦の憂き目に遭い、都合300万人の命を落としたということである。
このように現在某電機業界の数社も本書によると、明らかに致命的な時間的・サンクコスト(ご著書ではサンクタイムと仰っている)をもったいがって現在の悲惨な現状に喘いでいると断ずる。
このような憂き目に遭ったのは、やはり日本的なエリートが経営幹部を占めることになったからだ、と富山先生は分析する。
彼らは、いい大学を出て、一流企業に入社し、日本的な情緒的な意思決定を行い、合理的かつ論理的な判断が出来ない輩が多いとまで断ずる。
因みに富山さんは、東大法学部を出て、司法試験に受かり、当時は珍しかった外資系のコンサルタント会社に就職し、多くの苦労をしつつ、スタンフォードのMBAを30歳で取得し、それからのご活躍はご存知の通り。
そんなパーフェクトな経歴を持つ富山さんは、日本的な経営手法に疑問を呈する。ミドルクラスの課長連中は本当に会社の事を思って日ごろから仕事をしているのか?富山さんが再生を手掛けた、カネボウ・JAL共に改革を推し進めたのは、危機感を持った優秀な課長クラスのミドル・マネジャーだったという。
具体的に言うと、論理的な発想で経営の目線を伴って日ごろから、職務を随行しているか?会社が危機の時、部下に「君は要らない人材」だと合理的に説明して、会社の再建の力になれるのか?
JALの場合、そのような中間管理職達が派遣社員・スチューワデスが年収300万円で働いていることを、JALのOBに説明し、彼らに年金額のカットを求めてJALを再生に導いたことなどである。それはどの会社でも革新的な意識を持つミドル・マネジャーであるという。
そうなるためには、と書きたいところだが、詳しくは本書を読んでほしい。特に「俺はこんなに頑張ってるのに、会社は全然体質が旧態依然としているんだよな~」とかいう人にはうってつけ。
私の前職の支店長代理(今は部長職を拝命しているらしい)も城南信用金庫の「懸賞付き定期預金」という金融商品を聞いて「ウチの経営陣もしっかりして欲しいな~俺たちこんなに頑張っているのに~」と零してた。Y部長あなたの事ですよ!
という訳で、富山さんの凄さを少しも出さない、私のブログ。富山さんの部下だったら、真っ先にFiredである。おしまい。
- 感想投稿日 : 2016年3月29日
- 本棚登録日 : 2016年3月29日
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