のんびり行こうぜ (新潮文庫 の 7-3)

著者 :
  • 新潮社 (1990年2月1日発売)
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本棚登録 : 131
感想 : 8
4

本書の内容もさることながら「あとがき」の中身が面白かった。
「あとがき」の内容は以下のごとく。
“アウトドアブームのせいで田舎の人間が純朴純粋だと思われてるが、それは間違いである。農山村はちょと前まで貧しく弱肉強食の世界であり、弱い立場の人間(入婿・よそ者・土地をもたぬ者)は徹底的にいびられた。野田氏も亀山に移住してから半年ほど、ある村人にいびられた。しかし野田氏も九州の田舎出身、最終的にその村人を張り倒してしまう。すると次々に村人たちがお礼を言いにくるではないか、どうやら張り倒した村人は村の有力者の親戚筋で村の民生委員もしており、既存の村人には手が出せなかったという。それ以来、その村人は野田氏に出会うと逃げ出すようになった”
これを読むとわかるが、こういう性質は村に限らず都会でも見ることができる。たとえば学校や会社の部署、閉鎖的で小さなコミュニティにおいてハラスメント的に行わてれているよう見受ける。それらを鑑みると人間関係の濃淡によって浮き上がるだけで本質として誰にでも備わっている性質なのかもしれない、卑近な例ではSNSやネットでの著名人叩きも一種の「村化現象」なのではないかと思っている。
ちなみに〆で野田氏は『ゲンコツで物事が解決できるのが田舎のいい点』と述べているが(あとがきに付記されている日付は1986年)、昭和の野蛮さ令和の卑しさといった具合でベクトルが違うだけでパワーの総量は変わってない気がする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセー
感想投稿日 : 2023年6月27日
読了日 : 2023年6月24日
本棚登録日 : 2023年6月24日

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