万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社 (1988年4月4日発売)
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本棚登録 : 1754
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文章に血管があるなら隅から隅まで著者の思想と魂が込められてる真剣勝負の物語。 現代に至ってもなお断ち切れない「おり」が暴力となって現れるのと同時に、肉親の間でも沈殿している「おり」。それを乗り越えるためには自分のルーツを遡って行かなければならない人間の苦悩。それでも尚、人は同じ悩みを続けている。そして未来も。あああ、人間って・・・と思う。 読み始めから感じたのはこの作品の多くの部分が村上春樹の作品の表現とかなり似ているということ。どうりで村上はノーベル賞をもらえそうでもらえないはずだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: これぞ小説!長い!しつこい!!
感想投稿日 : 2014年9月11日
読了日 : 2014年9月11日
本棚登録日 : 2014年9月11日

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コメント 2件

minikokoさんのコメント
2014/09/12

フィリップ K デイックを読んでも、春樹、ぱくってるな〜!と、思う〜。

くろねこ・ぷぅさんのコメント
2014/09/17

minikokkoさん、
ずーっと春樹氏について気になっていたことがありましたが、この本を読んでその懸念?を発言する機会だとおもいました。

春樹氏は一人っ子であり、子どもも持たないので、人間関係の一番見たくない、知りたくない、体験したくないことを逃れられる立場にあるということです。なので、彼の小説は不特定なコンクリート+かつプラスチックを感じさせる街で、一人パスタなぞ茹でてる臭みのない表現になる。だからそこ、ぐだぐだした世界に生きるホントの凡庸なる人間にウケるんだと今、はっきり言うわ。

彼の小説には自分(主人公)を表現して「凡庸」という言葉が出てくるけど、それすらあこがれちゃうようなスパイスが降りかかってるというか、あぶらぎった調味料がないというか・・・

家族は最小単位の社会だから、そこのところ、知的障害の子供が生まれたり、田舎の奥底でたくさんの兄弟姉妹と共に生きた大江の表現にはやっぱり耳や目を覆いたくなるような苦悩があるの。だから家族間で嫉妬とか怒りとかを経験せずに済んだ人って、最後のところ難しい・・・何が難しいのか表現できないけど。

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