出口のない部屋 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年4月25日発売)
3.33
  • (3)
  • (14)
  • (16)
  • (7)
  • (0)
本棚登録 : 95
感想 : 12
3

自分という存在に違和感を感じてしまったら、人はどう生きていけばいいのだろう。
いま、ここにいる自分。それは本当に自分なのか。
誰かの思い通りに操られ、自分の意思など関係なく生きらされているだけなのか。
自分のアイデンティティーがわからなくなってしまったとき、すがれるものがあればすがってしまうのが人の弱さなのかもしれない。
自分を他者に反映し、他者を自分に取り込む。
そうして、歪んだ形でも自分を保つしかなかったのかと思うと切ない。
閉じ込められた部屋での三人の会話が面白かった。
それぞれ、自分に都合のいいところだけを語り、真実は告げない。
そして語らなかった部分は、人生から削除してしまったように最初からなかったことにして生きてきた。
語らなかった部分にこそ込められている心理描写が深い。
何よりも物語としての構成がよかった。
途中で「もしや?」と結末が見えてくる場面もあったけれど、読み終わってみればいろいろと違った面もみえてくる。
三人が語り合う「出口のない部屋」の小説部分は特に面白いと思った。
しかし、結末はあれでよかったのだろうか?
最後にぬくもりを感じられたことが救いになったのだろうか?
「他者は地獄である」(サルトル)の意味が、いまひとつ理解しきれなかった。
様々な真実に対し、意識が否定をくわえていく。
そして結局は真実を見失っていってしまう。
ゆえに、その精神世界は地獄である・・・こんな意味なんだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2017年3月14日
読了日 : 2017年3月14日
本棚登録日 : 2017年3月14日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする