月9 (小学館文庫 な 15-1)

著者 :
  • 小学館 (2011年9月6日発売)
3.21
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本棚登録 : 38
感想 : 5
3

人間とは複雑で不可解な存在だ。
だけどもしかしたら、女は単純で嫌になるほどわかりやすい存在なのかもしれない…と思ってしまった。
周囲からは友人だと思われていた弓絵と晴子。
いつだって、互いに優越感を抱きながら友人ごっこを続けてきた。
自分は優秀だ、自分は美しい、自分はいつだって悪くない。
弓絵は自分の感情を隠さずに、相手よりも優位に立っていることを垂れ流しながら生きているような女だ。
脚本家として名を成したこともあるけれど、それもいまでは過去の栄光のように色あせてきた。
常に自分よりも格下だと余裕をもって接してきた晴子が、人気ドラマ枠である「月9」の脚本を書くと知って穏やかではいられない。
晴子はけっして表立って弓絵を貶めるようなことは言わない。
哀れな女だと憐れみながら、どこか冷ややかに弓絵を観察しているようなところがある。
なかなか脚本家として芽が出なかったとき、弓絵から笑顔の中に垣間見れる悪意をどれだけ受けてきたことか。
晴子が大根役者だと思っている「月9」の主演アイドルの横槍で、弓絵に決まりかけていた仕事が自分に回ってきたことも何とも思わない。
自分は弓絵のような愚かな女ではない・・・と晴子は思っている。
終盤に晴子が自分と弓絵の関係に思いをめぐらす場面は印象的だった。
結局一番まともに感じたのは晴子。
自己愛ゆえの愚行を繰り返し、その愚かさにも気づかない可哀そうな弓絵。
壊れきっている、救いようのないマリオネットの舞子。
そして傀儡子に徹した長本。

愚かな女は怖ろしい。
引き際を知らない女はもっと怖ろしい。
高みの見物を決め込んで楽しんでいる女はさらに怖ろしい。
あっという間に読み終えてしまったけれど、「あぁ、いるいる!!」と同意してしまうような描写を楽しんだ物語でもあった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サスペンス
感想投稿日 : 2017年4月9日
読了日 : 2017年4月9日
本棚登録日 : 2017年4月9日

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