月9 (小学館文庫 な 15-1)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 38
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094086492

作品紹介・あらすじ

一度は脚本家として成功を手中にし、自信過剰で自意識の強い弓絵。その陰に隠れながらも、成功を目前にして胸の内で強烈な野心を燃やす晴子。二人は親友ではあるが、人気ドラマ枠の脚本家というポジションをめぐり、激しく火花を散らしていた。そんな二人の運命が、呪いの人形をきっかけに変わっていく…。弓絵と晴子を中心に、二人に取り入る若い脚本家志望の女や「業界の女王」が絡み合い、繰り広げられる激しい心理バトル。野心、嫉妬、自己愛、復讐心、闘争心…女の中に潜む「魔女性」を中村うさぎが赤裸々に描く傑作サイコサスペンス、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭が「すべては、あたくしの差し金だったのです。」だったら、★★★★★だったかも、、そこで少し白けてしまいました
    中村うさぎ先生はブスの心情を描くのが本当におじょうず、一気に読了した

  • 人間とは複雑で不可解な存在だ。
    だけどもしかしたら、女は単純で嫌になるほどわかりやすい存在なのかもしれない…と思ってしまった。
    周囲からは友人だと思われていた弓絵と晴子。
    いつだって、互いに優越感を抱きながら友人ごっこを続けてきた。
    自分は優秀だ、自分は美しい、自分はいつだって悪くない。
    弓絵は自分の感情を隠さずに、相手よりも優位に立っていることを垂れ流しながら生きているような女だ。
    脚本家として名を成したこともあるけれど、それもいまでは過去の栄光のように色あせてきた。
    常に自分よりも格下だと余裕をもって接してきた晴子が、人気ドラマ枠である「月9」の脚本を書くと知って穏やかではいられない。
    晴子はけっして表立って弓絵を貶めるようなことは言わない。
    哀れな女だと憐れみながら、どこか冷ややかに弓絵を観察しているようなところがある。
    なかなか脚本家として芽が出なかったとき、弓絵から笑顔の中に垣間見れる悪意をどれだけ受けてきたことか。
    晴子が大根役者だと思っている「月9」の主演アイドルの横槍で、弓絵に決まりかけていた仕事が自分に回ってきたことも何とも思わない。
    自分は弓絵のような愚かな女ではない・・・と晴子は思っている。
    終盤に晴子が自分と弓絵の関係に思いをめぐらす場面は印象的だった。
    結局一番まともに感じたのは晴子。
    自己愛ゆえの愚行を繰り返し、その愚かさにも気づかない可哀そうな弓絵。
    壊れきっている、救いようのないマリオネットの舞子。
    そして傀儡子に徹した長本。

    愚かな女は怖ろしい。
    引き際を知らない女はもっと怖ろしい。
    高みの見物を決め込んで楽しんでいる女はさらに怖ろしい。
    あっという間に読み終えてしまったけれど、「あぁ、いるいる!!」と同意してしまうような描写を楽しんだ物語でもあった。

  • 女王様気質だがそれを周りから笑われていることに気づかない「弓絵」。
    華の無さ、カリスマ性や自分を彩る伝説の無さに悩み、男性とすぐに関係してしまうところのある「晴子」。
    年老いた作家に可愛がって貰い弟子のような生活、屈託のない笑顔の裏に何か秘密も持っていそうな「舞子」。
    弓絵が旅行先からシャレで呪いの人形を買って来てから、3人の周りには奇妙なことが起こり始め3人はお互いを疑っていく…
    3人のドラマ脚本家の女たちの、男性や作品評価、自分の女性としてのプライド、を巡るサイコホラーもの。

    女って怖いわー。

    「呪いの人形」がキーワード的になって話は展開していくものの、そのおかげで話が分かりにくくなっている箇所も。

    最終的に、色んなものが絡み合って、一度描かれた負の感情が他のキャラクターにも伝染し、みたいなところの描き方がとても上手い。

  • 女のありとあらゆる醜い部分を描き切った物語。
    呪いの人形はきっかけに過ぎず、晴子を引きずり下ろしたい、転ばせたい、泥をつけてやりたいという気持ちは元から弓絵の心の底に潜んでいたのでしょう。
    マイナスの感情が更にマイナスの感情を呼ぶ、怖くも哀しくもあるお話です。

  • 題名に引かれて購入。女の嫉妬で自分自身が壊れていく様がリアルで怖かった。人形のくだりはないほうが更にリアル度が増したような気もする。

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著者プロフィール

1958年2月27日生まれ。
エッセイスト。福岡県出身。
同志社大学 文学部英文学科卒業。
1991年ライトノベルでデビュー。
以後、エッセイストとして、買い物依存症やホストクラブ通い、美容整形、デリヘル勤務などの体験を書く。

「2017年 『エッチなお仕事なぜいけないの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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