刑期を終え出所してきた女児殺害事件の犯人は冤罪を訴える。
自分は無実なのだと、真犯人は別にいるのだと。
そして、彼の復讐心は真犯人だけでなく捜査をした警察へも向けられる。
何故やってもいない犯罪を自白したのか?
犯罪や警察と無縁の人間は考える。
本当に無実ならば自白などしないだろうと。
柏木は当時の目撃者である女性へのメールでこう訴えている。
取調べの厳しさに肉体的にも精神的にもへとへとになり、正常な精神の糸が切れる寸前まで追い詰められてしまったのだと。
取調べの苦しみから抜け出したい、先のことは後で考えればいい、いまは刑事の言いなりになり、裁判が始まったら本当のことを言おうと思ってしまったのだと。
そして「自白の研究」や「自白の心理学」、「冤罪はこうして作られる」などの書籍を例にあげて読んでみてほしいと女性に頼むのだ。
設定も展開も、そして結末も意外性があって面白かった。
もう少しだけ深く掘り下げていればもっと面白かっただろうに・・・という思いもあるけれど、結果的に冤罪で裁かれた柏木をめぐる事件の顛末はいろいろと考えさせられるものがあった。
人は愚かだ。
目の前のことを先送りにしてどうにかその場をしのげればいい。
そんなふうに考えてしまうことはよくあるだろう。
けれどそのツケは必ず自分に戻ってくるのだと、物語を読んであらためて思った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー
- 感想投稿日 : 2017年3月29日
- 読了日 : 2017年3月29日
- 本棚登録日 : 2017年3月29日
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