ダヤン、タシルに帰る: Dayan in Wachifield7

著者 :
  • ほるぷ出版 (2007年4月1日発売)
3.78
  • (13)
  • (7)
  • (18)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 97
感想 : 14
5

ダヤン長編ファンタジー第7弾、ついに完結編です。

本書では、ダヤンを送り出した、
未来のわちふぃーるど「ハルカノクニ」と
ダヤンがやってきた、
過去のわちふぃーるどとアルスが分裂する前の「アルビトーク」の
物語が交互に語られます。

「ハルカノクニ」は「アルビトーク」から見ると未来、
「アルビトーク」は「ハルカノクニ」から見ると過去。

それなのに、ともに時間が流れているという不思議さ。

どちらの世界を生きる者たちも、自分達の今を懸命に生きています。

自分達の信じるところで、選択し、行動し、今を切り開こうとしています。

ふたつの時をつなぐもの、
それは、ここに来るまでの読者なら、すでに知っているあるものなのです。

それにより、ふたつの時はつながるのです。

私は、後追い読者の特権を余すところなく利用し、
リアルタイム読者が1年1冊ペースで
8年かけた冒険を3週間弱で駆け抜けました。

第1巻はこなれていないところがあり、
これは、本格的ファンタジーを読むための前哨戦として読むもので、
小学校中学年で行けるかな、なんて思っていたのが、
どんどん本格ファンタジーになって行きました。

第1巻では言葉はこなれていなくても、
全体のつじつまが合わなくことはなく、
世界観がきちんとあったのだということがわかります。

1巻のあのセリフが6巻につながっているとか
3巻の仕掛けが7巻で完遂するなど、
きちんとつながっていることが感じられました。

全7巻を通して、
ダヤンは何をするために選ばれたのだろうとずっと考えてきました。

そして、ダヤンの果たした役割は、期待以上でした。

本も人も別れ難いのに旅立ってしまった存在もあれば、
もう少し早く出会いたかった存在もあります。

ですが、すべてを超えて、
時は今だ、これでよかったのだと思いながら、
私は、今を生きて生きたいと思うのです。

本は、私に、語るための言葉をくれました。

言葉を紡ぐこと、
それは、自分が住む世界を創造することだと思います。

その意味で見ると、ダヤンとは何か、
このシリーズを読了した今、
私は、ただひと言で言い切ることができます。

ですが、ここでは、「私のコタエ」は、語りますまい。

「あなたのコタエ」は、あなたがダヤンと一緒に見つけてほしいと思います。

12月17日は、ダヤンがアルスからわちふぃーるどに来た日です。

この日は時空がつながる特別な日なのです。

本シリーズは、全体として雪の描写の印象が強い作品です。

夏に読んで涼むのも悪くないですが、
読むのは、冬が似合う、と思うのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2010年1月4日
読了日 : 2010年1月4日
本棚登録日 : 2010年1月4日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする