新版 史的システムとしての資本主義

  • 岩波書店 (1997年8月22日発売)
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「世界システム論」のウォーラーステインによる、歴史的に見た資本主義論。歴史的見地から、的確に資本主義が何かを解明している。スケールの大きなヴィジョンに感銘を受けたが、まだその意見に納得できない。今後他の著書も読んでみたい。
「資本主義は歴史の産物にほかならず、それが演繹的につくられたモデルと食い違っているとすれば、間違っているのはモデルの方なのである」p vii
「史的システムとしての資本主義は、明らかに馬鹿げたシステムなのである。そこでは、人はより多くの資本蓄積を行うために、資本を蓄積する。資本家は、いわばくるくる回る踏み車を踏まされている白ネズミのようなもので、よりいっそう速く走るために常に必死で走っているのだ。その過程では、良い暮らしをしている者もあれば、惨めな暮らしを余儀なくされる者もあることは間違いない。しかし、良い暮らしをしている人々にとっても、どこまでその生活水準を上げ続けてゆけるというのだろうか。客観的にも、主観的にも、もっと以前の史的システムのもとにあった時代と比べて物質的にさえ恵まれていないと思える」p47
「(資本主義の障害として)他国より高い効率を生み出した諸要因は常に他国によって模倣されてしまう」p73
「史的システムとしての資本主義がカバーする全時代、全地域を通じてあくなき資本蓄積が展開されたということは、すなわち、このシステムのもとでは実質的な格差がたえまなく拡大し続けてきたことを意味している」p94
「人種差別こそが史的システムとしての資本主義の唯一のイデオロギー的支柱であったし、それはまた、適当な労働力をつくりあげ、再生産してゆく上で最も重要なものであった」p107
「(真理の探究といった)普遍主義への信奉こそは、史的システムとしての資本主義が組み上げたイデオロギーのアーチの頂点に置かれた要の石であった。真理の探究こそが、すべての知的活動の存在理由であると、主張し続けてきた」p108
「宗教は民衆にとってのアヘンである(マルクス)」p109
「資本主義的世界経済が新しい地域を吸収して膨張してゆく過程では、いろいろな文化的圧力が作用する。キリスト教への改宗、ヨーロッパ語の押し付け、特定の技術や生活習慣の強要、法体系の変更などがそれである(西欧化とよぶ)」p110
「世界労働人口の大多数は農村地区に住んでいるか、農村と都市のスラムのあいだを往ったり来たりしている人々で、彼らの生活は500年前の祖先たちのそれと比べて悪化しているのである。食料は不足しているばかりか、栄養のバランスも悪くなっている」p139
「社会科学には幸福の度合いを測るメーターは存在しない(ジャック・グーディ)」p140
「平等や公正の度合いを最大限に高め、また人間自身による人間生活の管理能力を高め(すなわち民主主義をすすめ)、創造力を解放するような史的システムでなければならない」p154
「資本主義は、生産効率を高めることによって、全体としての富を激増させた。この富は不平等に分配されてきたのだとしても、これ以外の、いかなる既存の史的システムの下においても人々が享受しえなかったほどのものを、間違いなくすべての人が受け取れるはずであった」p163
「特権を持たない、世界の人口の50ないし85%を占める人々にとっては、この世界が以前のどの世界よりも悪いものであることは、ほぼ確実である」p193

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感想投稿日 : 2018年11月12日
読了日 : 2018年11月12日
本棚登録日 : 2018年11月12日

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