モ-ム短篇選 (下) (岩波文庫 赤 254-12)

制作 : 行方昭夫 
  • 岩波書店 (2008年11月14日発売)
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本棚登録 : 221
感想 : 25
5

★★★2019年3月★★★


実に面白い短編集だった。70代を過ぎたモームのユーモアや優しさがにじみ出た作品が多かったように思う。
この短編集に収められた作品を列挙する。


・物知り博士
・詩人
・ランチ
・漁夫サルヴァトーレ
・蟻とキリギリス
・マウントドレイゴ卿
・ジゴロとジゴレット
・ロースター・イースター
・サナトリウム
・大佐の奥方
・五十女
・冬の船旅

「ジゴロとジゴレット」では、命がけの演技で生計を立てる芸人夫婦を描く。金持ちの豚どもを相手に、命を懸ける。なんて事だ。「金なんてくそくらえだ」と言いつつも、最終的には舞台に上がる決断をする。
世の中何か間違ってる、昔も今も。そんな事を考えてしまった。

「サナトリウム」というのは結核療養所の話だが、お互いをののしりあいながら長く収容された爺さん二人がいたり、療養所内の恋があり。しかしこの物語での問いかけはいかに「死」と向き合うかだと思う。
ラストシーンでは、ある結核患者が自らの運命を受け入れる。それまで彼は自分の運命を呪っていたのが
「死ぬのが君じゃなくて僕でよかった」と悟るのだ。


どの短編の深く考えさせられたり、そんな中にもクスッと笑う要素があったり。モームのストーリーは本当に面白い。物語が体の中に入ってきて、心は別の世界に行く感じがする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学
感想投稿日 : 2019年3月26日
読了日 : 2019年3月26日
本棚登録日 : 2019年1月18日

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