オスマン帝国の解体 文化世界と国民国家 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社 (2018年3月11日発売)
4.40
  • (6)
  • (2)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 112
感想 : 7
5

題名はオスマン帝国の勃興とその落日のようだが
主役はそこでなはなく
現代でも主要な民族紛争の舞台である
バルカンおよびパレスティナ
その原因のひとつとして地域的特性を挙げ
近代以前のオスマントルコによる統治と
近代以降の
西洋ナショナリズム(ひとつの民族ひとつの国家)による
「西洋の衝撃」を解く論考
近代西洋における国民国家思想と現実はなぜ生まれたか
その対比として近代以前のイスラム世界はどうあったか
そしてそれを継いだオスマン帝国が影響力を失っていき
トルコ共和国となっていく過程で何が起こったか
というようなことが説明される
当然ながら民族紛争はイスラム西洋間のみの衝突でなく
歴史という大局からは現実への反抗に際しての
宗教とならぶ旗印でしかないはずではあるが
民族の一体という夢が多くの人々の独立欲を駆り立て
そして帝国主義に対抗した原動力であるのもまた事実
平穏と豊かさを誰もが求める一方で
公共にそぐわなくとも個人利益と功名を求める欲こそが
世界を前に進めてきたのもまた現実
ローマもイスラムもモンゴルもアメリカヨーロッパも
現代中華も
世界国家であるところに大きな華があった一方で
停滞と退廃があり
小国家の貧しさと引き換えの盲目の幸せと
いずれが優れた世界システムであるかは難しい
寛容も合理も総論反対しようがないが
その匙加減に誰もが納得することは有り得ない
歴史は現実と向き合って
全ての歴史の構成者が
よりよく賢明であるべきを示唆するが
答えを教えてくれるわけではない

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年2月1日
読了日 : 2020年2月1日
本棚登録日 : 2020年2月1日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする