「愛逢い月」とは七夕の牽牛織姫が互いに愛して会うという月。陰暦7月のこと。牽牛と織姫は愛し合うが、外因により一緒に暮らすことは叶わず、一年に一度だけ逢瀬を許される。この題名のごとく、ずっと幸せには暮らせなかった男女の愛の形が描かれている。最初らか求めていたものがお互い違った、あるいはだんだん二人が別方向に行った、など、変化してしまった愛、といったところか。
篠田氏が30代後半の初期の作品群。登場人物はおおむね30代くらいで、その当時の等身大の思いを描いたのかな。その後になると「女たちのジハード」とか「斎藤家の核弾頭」とかけっこうスカっとした読み心地のもあるが、これはもやもやした愛の形が描かれている。
「秋草」小説すばる1993.10月号
スランプに陥ったイラストレーターの悦子。 ある寺で「秋草の間」という狩野派の障壁画を見て、凡庸とも思える絵の中に引き込まれるものを感じとった行動は・・
「38階の黄泉の国」小説すばる1991.8月号
若年性のぼけになってしまった菜穂子。一人息子は大学に受かったと報告にきて、その息子の食べさせてくれるゼリーしか受け付けない。死への床でやがて記憶は大学時代に思いを寄せた菅原に向かう。
「コンセプション」小説すばる1992.11月号
コンセプションは受胎のこと。ベテランの編集者正木と若い売りだしの小説家、梨沙。末期ガンの正木の妻。3人のからみあう感情。
「柔らかい手」小説すばる1994.3月号
海中写真家の啓介。海中で鱶が迫ってきて急に浮上したことから不随になる。写真第一で妻は放っておかれたが、今度は・・
「ビジョンブロッド」小説すばる1993.8月号
交際した男が逃げそうになり、けりをつけようとしたが、実は男は・・ 私は早まったのだ。
「内助」小説すばる1993.6月号
高校時代の憧れの君、俊一と結婚した佳菜子。司法試験を受け続けるが叶わず、新たな道を俊一は見つけるのだが佳菜子は・・
小説すばるに単発的に発表されたのを、単行本化にあたり全面的に手を入れた。
篠田氏 39歳の時の発行。
1994.7.25第1刷 図書館
- 感想投稿日 : 2021年6月27日
- 読了日 : 2021年6月27日
- 本棚登録日 : 2021年6月12日
みんなの感想をみる