家族とともにギリシャのコルフ島で暮らした子ども時代の懐かしい想い出を、「ぼく(ジェリー・ダレル)」が語る。
自然の描写がとても美しい ── コルフ島に向かう船の上から見る海の夜明け、レモンの葉にへばりついて催眠術をかけられたように鳴き続けるアマガエルとその下の地面をこっそり這いながら虫をむさぼるヒキガエル、あるいは夜の海辺でのホタルと夜光虫の競演……
次に、個性豊かな登場人物(+α)たち ──「ぼく」を一人前のひととして認め紳士的に接してくれる博識の生物学者セオドア、ダレル家からの頼みなら何だって叶えようとするスピロ、言葉を喋れないけれど「ぼく」の心を引きつけてやまないバラコガネムシさん、生き物同士として「ぼく」とぴったり息の合った活躍を見せる犬のロジャー、その他大勢の島の人々や「ぼく」 の家にやって来る奇妙なお客さんたち、そして何より家族たち ── 彼らに囲まれながら「ぼく」は様々な冒険をし、生き物たちに触れ、いろんなことを発見し、驚き、感動する。家の中にサソリや蛇を持ち込んで、とんでもない騒動も巻き起こす。
とかく大人は子どもに何でも教えたがるが、子どもは自分で周りの世界からいろんなことを吸収し、自分なりに体系化し、身につけていく能力を持っている。無理矢理頭に詰め込まれたものではなく、自ら経験に基づいて得た知識は、生きたものになる。「学ぶ」とは本来、こういうことなんでしょう。そして好きなことを好きなだけ学べるということは、とても幸せなことだと思う。だからこの物語は、幸福感に溢れている。
登場する生き物たちのなかでは、第4章や第8章のカメたちがユーモラスで平和的なので特に好きだなあ。
- 感想投稿日 : 2019年12月8日
- 読了日 : 2019年12月8日
- 本棚登録日 : 2019年12月8日
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