科学的実在論を擁護する

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  • 名古屋大学出版会 (2015年1月31日発売)
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第5章
(p. 129〜)「眼と脳の視覚システムは非常に複雑な仕組みなので、それがちゃんと機能したと言うのは、われわれが設計した人工物であるニュートリノ検出装置の場合よりもしかしたら困難かもしれない」と述べられている。だが、感覚的な直接経験を疑うならば、科学は不可能になるのではないか。結局のところ、肉眼で見ているものの実在性まで疑ってしまえば、肉眼での観察にどこかで依存している科学という営みは、二重の懐疑にさらされることになるからだ。
章の最後で、戸田山は実在論は理論の連言が可能なのに対し、経験的十全性では不可能だ、という議論をしている。だが、この議論はおかしいのではないか。連言した理論が経験的十全でないなら、その理論が真だということも言えないだろう。戸田山は「オズ科学像では連言化を合理的手順として認めることができない」が、「イド科学者(実在論者)は、理論を他の理論や補助仮説と接合させて、より多くの観察可能な帰結を出せる」と言う。だが、イド科学者も出鱈目に理論を接合させているわけではなく、何らかの一定の基準や手続きにのっとっているはずだ。その基準や手続きをオズ科学者も共有できるのではないか。

第6章
対象実在論は、科学理論に対しては科学の目的については科学的実在論を主張し、理論的対象については「現在の」実在論的信憑について述べている、と主張しているように見える箇所がある(p.190)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年3月4日
読了日 : 2015年4月4日
本棚登録日 : 2015年3月4日

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