源氏物語には 「桐壺」と「帚木」の間に“輝く日の宮”と題された巻があったのでは、とされる説があります。その根拠は、幾つかあり、本書でも触れられています。
この小説は、エピローグ“0“ で主人公の国文学者・安佐子の高校生時代のスリリングな小説から始まります。そして、この小説が作中、所々でエッジを効かせます。
実は、私は本書は、「源氏物語第1.5帖 輝く日の宮」なる創作物語としての小説のみを読むつもりでいたのです。全く思い込んでいて。
各章で、多種な場面設定が用意されて、多様な知識人が登場します。芭蕉、武藏、鏡花等々、彼らを媒体として多彩な文学評論がなされていきます。これが、ストーリーを伴って無理がない。
作品半ば4項あたりから源氏物語の核心に近づいていきます。安佐子が、悩みながら研鑽を重ね「輝く日の宮」の執筆となります。豊富な資料、幅広い知識、深い考察に圧倒されます。特に、紫式部と藤原道長との関係性からの、「輝く日の宮」廃棄説は、それなら許せるかしらと思わせるものでした。
そして、それだけでなく、安佐子と独身主義者の彼(武藏好きでなかなかのエリート)との大人の恋の行方がこの小説を馴染みやすくさせ、いろごのみ感を楽しめます。
なかなか一読では読み切れません。もう少し源氏物語を読んでから再読しようと思います。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2022年6月3日
- 読了日 : 2022年6月3日
- 本棚登録日 : 2022年6月3日
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