表題の芥川賞受賞作と「蜘蛛の声」2編
幼児期の厳しい虐待の記憶から、被暴力への依存性とも思われる主人公タクシードライバー、27歳。
彼は、被暴力の中で思考する。
自身の生の認証は、死との狭間で可能なのか。
彼は、数々の死の欲動の中、抵抗し踏み留まる。
実親を拒否し、「土の中の子供」としての出生を受容した時、僅かだが、現実の未来が訪れる。
主題が幼児虐待になるので、読者を選ぶかもしれない。
短編の範疇なので、仕方ないかと思うけど、ラスト近くの慰問会のエピソード、又、彼に肯定的な対応をみせた同施設の男の子の成長・自殺、彼の施設入所時の医師の話等は、もう少し書き込んでいたら、彼の屈折の遍歴を辿れたかもしれない。
「蜘蛛の声」
社会あるいは、自己との闘いからの逃避。
存在自体を曖昧にしてしまう雰囲気が良い。
まあ、蜘蛛をださなくても良いんじゃないか?
何か期待してしまう作家さんでした。他の作品も読みたくなりました。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
新潮文庫
- 感想投稿日 : 2022年3月3日
- 読了日 : 2022年3月3日
- 本棚登録日 : 2022年3月3日
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