巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)

  • 河出書房新社 (2008年4月11日発売)
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感想 : 59
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面白い、面白いとは聞いていたが、こんなに面白いとは思わなかった。
いや、ホントに面白いったら面白いィィィ!

ロシア文学なんてお固いんでしょ、しかめっ面でしょ、という思い込みを打ち砕く奇想小説。

モスクワに悪魔とその一味がやってきてとにかく馬鹿騒ぎをする。
評論家は電車に轢かれて首を切断し、詩人は気が狂い、劇場では偽札が舞い、女たちは下着姿になる。
劇場支配人はヤルタに飛ばされ、猫が拳銃を抜き、シャンデリアの上を飛び回り、そりゃもう大騒ぎ!
裸エプロンのメイドも、裸で空を飛ぶ魔女も出てきます!

どこに連れていかれるかと思いきやどこにも連れていかれずひたすら悪ふざけのファンタジー、でも最後はなんかハッピーエンド…。

革命後、スターリン政権下のソ連で、出版される見込みもないまま、10年に渡り書き続けたということだが、ブルガーコフにとって書くことが楽しかったんではないだろうか? 社会批判というより現実逃避の物語。
ただ、キリスト教の素養がないため、巨匠の書く、キリストを処刑したピラトゥスの物語がどうもわかりにくい。

ちなみに、この小説のインスピレーションを受けて出来たのががストーンズの「悪魔を憐れむ歌」。ミック・ジャガーに読むように薦めたのは、当時付き合っていたマリアンヌ・フェイスフル。
パティ・スミスの最新作「バンガ」も、小説の中でピラトゥスが飼っていた犬の名前。

いやいや、驚くような読書体験でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 奇想
感想投稿日 : 2013年8月12日
読了日 : 2013年8月2日
本棚登録日 : 2013年7月17日

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