スノウ・クラッシュ 下 (ハヤカワ文庫 SF ス 12-2)

  • 早川書房 (2001年4月1日発売)
3.16
  • (5)
  • (8)
  • (46)
  • (2)
  • (3)
本棚登録 : 205
感想 : 22
1

メタバースという言葉の元ネタ。今頃読むからにはそんな理由しかない。
リアルなメタバースについてはUIが劇的に改善されない限り用はないというのが読前読後でかわらぬ印象である。アイデアそのものにケチをつける気はない。

そも、サイバースペースやらジャックインやら、ギブスンや士郎正宗が描写したコンピューター内世界に、概念自体には衝撃を受けたものの、ものすごい斬新さを感じていなかったことを、この読書で自覚した。おそらくは幼少の折にコミックボンボンあたりで出くわしていたアレコレが原因ではなかろうかと思う。
似たようなところで『ブレードランナー』も挙げられ、おそらく映画をTVで見る機会を得るよりも前に、映画に触発された作品群を目にしていたがために新しさを感じられず、ルドガー・ハウアーに食われるハリソン・フォードという拭い難い第一印象を更新し得ずにいるのだろう。

さて、本書の物語としての評価は not for me である。
シュメール神話の独自解釈そのものはよいとして、それをヒロという人物がなんの疑いもなく受け入れたこと、突拍子もないそれがまさに事件の背景であったこと、それが探偵の謎解きのように説明されたこと。そんな理由による。なんでそんなドヤ顔で説明してんのヒロ?ってカンジ。
探偵の謎解きに類するシーンは、たぶん、最高にがっかりするシーンで、かつてはそんなことはなかったのに、いつからそうなってしまった。『羊たちの沈黙』後、何年かしてサイコものが流行った頃か。犯人の動機がサイコで片付けられるようになってから、探偵ではなく犯人が語るようになってからか。

主役不在でも物語が成り立つならいいとか思っていたが、この物語のクライマックスでは、主役と思える人物らと濃厚に接触していた敵役が、あまり登場しておらずまたアクション担当という印象を与えられていない人物と刺し違える勢いのアクションをやってしまい、主役は不在、準主役が脇役になっており、それはそれでしらけるなという学びを得た。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: not for me
感想投稿日 : 2022年3月5日
読了日 : 2022年3月5日
本棚登録日 : 2022年3月5日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする