源義経が頼朝に追われて海をわたりテムジンとなった。モンゴルに憧憬を抱くようになったのは幼い日、そんな説話を知ったからだろうか。
本書に通底しているのは古い学説や根拠に乏しい風説に対抗しようという強い意志で、ヨーロッパ中心主義というものに疑問が呈され始めたことを受け、大航海時代には先駆けとなる世界国家の存在を抜きには語れないという。
世界帝国とは即ちモンゴル帝国、大元ウルスの勃興前夜から始まり、消滅までを描いている。
南宋攻略の一環に過ぎなかったという元寇の事情、ほとんど瞬時に覇を成すことができた遊牧社会の特徴、それを支えた能力主義による登用、多民族、多宗教への受容性を語る。
タタールの平和がもたらした東西の交流が世界に与えた刺激は、世界史において無視できるものではない。西欧中心主義はそれを無視してきた。
本書は1992年刊行、学問は漸次更新されるもので、30年前の書籍ともなれば現在では古くなってしまった知見もあろう。それを更新できる機会が楽しみである。
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- 感想投稿日 : 2023年4月28日
- 読了日 : 2023年4月28日
- 本棚登録日 : 2023年4月28日
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