フードスタイリストの卵・日高知明×翻訳家雨宮慈雨
叔母実華子の死を慈雨からの電話で知った知明は、居心地の悪い実家を出て、慈雨のところで居候をはじめる。
知明の家も慈雨の家も、理解のない情の薄い家族であるような印象を持ってしまうが、多分ごく一般的な人達が営む家庭なんだと思う。我が子のすべてを許容するってよく言われるけれど、世間の目を良く知る大人がそれらから、当人、自分、周囲の人を守りたいのは当たり前。
知明が母親からの愛情を感じられなかったと思うなら、自分の欲しがったものと与えられたものが違ったんだろうな、それはそれで母子の悲劇ではあるんだけど。そこがかみ合ってる母子ばかりじゃ無いと思う。
こういった部分を「さみしさ」と形容するなら、かなりの人が心のどこかに持つ負の部分をそっと取り出してドラマにした感じ。「さみしさ」がうめられる安心を与えられたラストにホッとする。
「かわいい甥っ子」として「ちあき」のはなしを実華子から聞いていただろう慈雨が、知明を嫌うはずがない。
年齢がいってる分、いろいろあった分、慈雨の「さみしさ」の大きさが素直でない言動になっているのだろうけれど、その「さみしさ」を感じ取れる知明も「さみしさ」を知っているってこと。そういうのが文脈から感じれるのが好き。
家の周辺とかフランスとかの情景が好き。
本筋に邪魔にならないのに、きちんと仕事について描かれてるこのバランスが好き。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ディアプラス文庫
- 感想投稿日 : 2012年1月5日
- 読了日 : 2012年1月5日
- 本棚登録日 : 2012年1月5日
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