★4.5
読み応えのある非常に重厚で良質なミステリ。事件そのものより、濃厚な人間ドラマが素晴らしく秀逸。加害者はもちろん、被害者を始め彼らを取り巻く人間関係、些細なことから大きな軋轢まで鋭い観察眼で冷徹に描ききった傑作。今までこの作家の作品を読んだことがなかったとは、何とも惜しい。
ほぼ終盤まで★5だったのだか、あの結末は気持ちを騒つかせるには余りあった。あの数ページが齎した何とも言い難い後味は、単に犯人を逮捕できないと言う事実のみならず、ヴェニーシャの死が、彼女を中心とした数々の諍いを無事に解決させてみんなめでたし、と言わんばかりに思え(作者が問う『正義』とは関係ないけれど…)、恐ろしいと同時に大きな不快感を覚えたから。真犯人の自白とも言える語りを前に、静かに淡々とそれを受け入れる警察官…諦めない意思を示して欲しかったのだが、法の前には無力ということか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
警察小説
- 感想投稿日 : 2016年12月8日
- 読了日 : 2016年12月8日
- 本棚登録日 : 2016年12月8日
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