人には誰でも、きっと何かしら秘密がある。
この作品に出てくる人たちは、みんな何かしらの秘密を抱えている。
人に受け入れられないかもしれないような、大きな秘密を抱え、悩み、傷つき、葛藤し、それでも生きていく人たちの姿を、この作品はとても柔らかい、不思議な空気感で描いている。
たとえば主人公・うる波は、亡くなった夫・鹿野くんの幽霊と暮らしているという、表沙汰にしたら周りから忌避されてしまうような秘密を抱えている。
でもそれが自分にとっての幸せなのだ、と何度も何度も決意を繰り返す覚悟や、自分と同様に秘密と決意に満ちた暮らしをする人々に思いを馳せる姿からは、秘密を抱えて葛藤をしながら生きる私たちも、秘密を抱えながら生きていっていいのだ、と受容される温かさを感じる。
きっと、現実の私たちの世界でも、それぞれの秘密やそれぞれの幸せの形を、大切にしながら生きていけばいい。そんな、救いのようなものを感じて読み終えられた作品だった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年10月29日
- 読了日 : 2023年10月29日
- 本棚登録日 : 2023年10月29日
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