4つのお話の中で「ジェヒ」と「メバル一切れ宇宙の味」が好きでした。
「ジェヒ」は、お互いやりたい放題の夜の交友関係をしてて、性や性的指向なんかの違いを超えて心底ソウルメイトだと思ってた女性ヘテロ同居人が、あれよあれよと言う間にいわゆる”普通”の結婚をして主流社会に復帰して行った時の、取り残された孤独感に似た経験を重ねた者として痛いくらいの共感を覚えずにはいられなくて、少ししんどかった。
一方「メバル」は純粋にある一つの恋愛の話で一つ一つの過程を堪能しながら読むことを楽しめた。そもそも前提として私が彼のキャラが好きだった。一回り違うその彼との初対面の描写(タトゥー、アイスアメリカーノのくだり)からしてすでに好きで、頭の中にそのあとの展開も含め、風景が完全にビジュアライズできて話に入り込んでいった。私的には俳優で言うと彼は「ペパーミントキャンディ」ぐらいのソル・ギョングさんか、日本だと大倉孝二みたいな感じ。いつも何かとlow keyな彼だけど、実は学生時代は熱心な学生運動家でその信念的な名残は全然健在で、GAPの星条旗のついたような服は着れないとか、オリンピック公園でデートする時はヨンくんの影響を密かに受けて今まで塗ったことない日焼け止めなんかしてきたりして、そんなくだりがたまらなく良かった。彼との関係に意識がいってしまっていたので、母親との方が少し理解がおざなりになっていたかもしれない。再読時にはそこにもう少し観点を置いて読んでみたい。おそらく母親は感づいていたけど言わない。ヨンくんも、彼女が気づいてるのかもしれない、気づいてるかもしれないことを自分も知ってる状況の中、真正面から伝えられないなら逆に、きっかけは不用意ではあったが知ってほしいような、でも病床でかつ敬虔なクリスチャンの母親でもある彼女に対して自発的な方向に踏み切れないもどかしさの中、何もかも知らないことにもっていこうとする葛藤が切なかった。
- 感想投稿日 : 2021年2月27日
- 読了日 : 2021年2月17日
- 本棚登録日 : 2021年2月17日
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