本書は太平洋戦争が開戦し、だんだんと敗戦の色が濃くなる時代に書かれた作品を集めた短篇集です。
時代背景をうかがわせつつも、太宰のユーモアや愛嬌が感じられるものも多かった印象です。
表題作は、性格は違えど小説好きは共通している5人兄妹がラプンツェルを下敷きにした物語を書き継いでいく、というもの。
物語の運び方や文章に各々の性格を反映させていることに舌を巻いてしまいます。
太宰の中に何人か住んでいるんじゃないか…とつい思わずにはいられません。
「服装に就いて」や「小さなアルバム」は声を出して笑っちゃいました。
太宰はどんな表情をしながらこれを書いているんだろう…と想像してしまいます。
ぐっと真面目な顔して書いていそうで、それがまたユーモラス。
笑っちゃうものだけではありません。
「散華」に引用された、戦地で玉砕した若者が太宰に宛てた生の声。
「東京だより」に描かれた、ある少女の美しさの原因に気付いた瞬間の著者の心の動き。
16編の作品を読むあいだ、思った以上に感情があっちへこっちへ揺さぶられたのでした。
読書状況:読み終わった
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読みました。
- 感想投稿日 : 2022年1月23日
- 読了日 : 2021年12月26日
- 本棚登録日 : 2022年1月23日
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