あなうさピーターのはなし

  • 青空文庫 (2010年3月10日発売)
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執筆時の原語(英語)だけでなく各国語への翻訳版を含めて世界110の国と地域で合計1億部以上を販売したと言われているピーターラビットシリーズ。日本でも、多くの子どもたちに親しまれ、また、大人を含めた熱狂的なファンをもっている。
作品筆者(著作者)であるヘレン・ビアトリクス・ポターは1943年に亡くなっており、そして死後50年を経過した時点でその作家の作品の著作権が切れる(日本の場合)ことから、本書を青空文庫に収めることは当然可能である。しかし、このポターが自身の作品に関する著作権をビジネスモデルとして成立・成功させた初めての作家であることは、あまり知られていないように思われる。
そもそもピーターラビットの姿(絵)はどこで見かけるかを考えてみると、多くの人は、ピーターラビットの絵本自体ではなく、ピーターラビットが描かれた、食器やカレンダー、文具、時計、などの日常品、そして、ピーターラビットのぬいぐるみを思い浮かべるのではないだろうか。
ポターは、自身が描いたピーターラビットをまずぬいぐるみとして製作するのだが、その際、権利(当時は特許権となっていた)をドイツのシュタイフ社と独占契約して、そのロイヤリティーを得ることに成功している。今から100年以上前の20世紀初頭のことである。女性がビジネスに積極参加することなど極めて稀(というか困難)であり、かつ、今日でいうところの「キャラクター商品」という概念がなかった時代であることを考えると、彼女に強い実行力と先見の明があったと深く敬服してしまう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 童話
感想投稿日 : 2019年10月7日
読了日 : 2019年10月7日
本棚登録日 : 2019年10月14日

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