女性は男性に比べると切り替えが速い人が多いから、メイのような過去に囚われがちな女性は少し珍しいかもしれない。まぁ、物語の中で元カレもあっさり過去になってしまうが。男性の場合は羽鳥先生は少し極端だが、フウちゃんくらい元カノを気にしているくらいは普通。大ちゃんくらいにスパッと諦められるほうが男は珍しいと思う。
メイは元カレを忘れられないし、新しい男性のことも元カレの残像を通して見てしまう。年齢も35歳で、若い頃のように衝動的に動くことはできず、行動する前にいろいろと考えてしまうせいで逆に身動きが取れなくなっている。
女性にとって35歳というと結婚・出産のチャンスがかなり限られてくる時期で、同時に仕事を選択するにしてもキャリアをどうするか考えなければいけない時期でもある。メイのように過去に囚われがちで考えすぎてしまう女性はかなりしんどいだろうと思う。
自分だけ前に進めていない気分になったり、比べるようなことではないのに劣等感を抱いてしまったり、普通というものがわからなくなったり。特別なイベントがある物語ではないが、同じ境遇の人が感じる大体のことは網羅されている普遍的な小説だと思う。男性の私でも年齢が近いせいか共感するところが多々あったので、自分だけの苦しみではなくて結構な人が同じようなこと考えているんだなあと感じた。
人間というのは面白いもので、これだけ八方塞がりで自分ではどうしようもないと思えた状況も、ちょっとした刺激とか環境の変化で急に歯車が回りだすことがある。最短経路では進めないなと思っても焦らずに、回り道をするつもりで何かいつもと違うことを始めてみるときっかけが得られるかもしれない。
- 感想投稿日 : 2022年12月29日
- 読了日 : 2022年12月29日
- 本棚登録日 : 2022年12月29日
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