佐藤泰志作品の映像化は欠かさず観てるので未読だった『夜、鳥たちが啼く』の制作が決まってこの文庫購入。
まずこちらから先に読んでしまったけど、収蔵順に読んだほうがよかったかな?
Ⅰ部の5編は連作で登場人物が繋がってます。
Ⅱ部の2編は書かれた時期、掲載順などは全く関係ないのですが、通しで読むとこの順番の妙がわかりました。編集者ってやはり凄い!
(ちなみに映画は「夜、鳥たちが啼く」の一編からだけでなく、この一冊の中からいくつかのエピソードを入れ込んでいます。ですから一冊丸ごと読んだ方が映画は更に面白くなるのではないかと。)
小説は独特の〝視点〟の取り方に初めは混乱しましたが、そういう事ならそれを思いきり味わおうと、少し意識して読み始めました。が、そのうちそんなことも忘れてノってしまいました。
Ⅰ部における主人公秀雄は、ひどい人なんです。
でも変な色気というか、活き活きとしていないところで逆に生命力を感じるような、そんなダウナー的魅力を感じてしまった。
光恵も同じだったのかな………。
だからといって光恵には共感は出来ないけど。
II部の「鬼ヶ島」は、サラリと書かれているように見えつつ実はかなり重い。そして僕〝高橋君〟は、この先苦しくなるに違いないと思うのだけど、彼がそれを自分の事として捉えられるのか、が気になります。自己中なようで実は視野広め。でも我は強い。文子とは共依存的なのかもしれないな。
「夜、鳥たちが啼く」はこの一冊の最後の締めとして実に良いんです。佐藤泰志にしては珍しく、ある意味前向きな話で。
〝そうだね。でもそう考えただけで素晴らしいんじゃないか〟キーになるこの一文に救われる。
全編通して、何かを背負い込む男は優しいだけじゃないと教えてくれました。
既に何かを抱えてるからそうするんだな。
男に限った話じゃない。
他人に限った話じゃない。
もう一回観たいな、映画。
- 感想投稿日 : 2022年12月24日
- 読了日 : 2022年12月24日
- 本棚登録日 : 2022年12月24日
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