たのしいムーミン一家 (講談社文庫)

  • 講談社 (1978年4月26日発売)
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作者のトーベ・ヤンソン(1914~2001年)は、ヘルシンキ生まれのスウェーデン系フィンランド人。ムーミン・シリーズの作者として世界的に有名だが、小説、絵画のほか、様々な領域で創作を行った。
ムーミン・シリーズは、1945年に『小さなトロールと大きな洪水』という作品で最初に発表されたが、その作品には、第二次世界大戦下で小国フィンランドが悲惨な経験をした影響が強く反映されており、児童文学作品としては注目されなかった。また、1946年に発表された2作目の『ムーミン谷の彗星』も売り上げは芳しくなかったが、1948年に出版された『たのしいムーミン一家』は、作風が変わり童話性が増したことから、英訳版がイギリスやアメリカで評判となり、一躍注目を集めるようになった。その後、『ムーミンパパの思い出』、『ムーミン谷の夏まつり』、『ムーミン谷の冬』(国際アンデルセン賞受賞)、『ムーミン谷の仲間たち』、『ムーミンパパ海へいく』と続篇を次々に出版し、1970年の『ムーミン谷の十一月』まで、小説としてのムーミン・シリーズは9作を数えた。
私が今般読んだ本書は、1970年代後半に出版された講談社文庫の全8冊シリーズ(『小さなトロールと大きな洪水』のみ含まれていない)の1冊(絶版)だが、現在は、同じ講談社文庫から新装版が全9冊(『小さな~』を含む)で出ている。
私は普段児童文学を好んで読むわけではないのだが、今般新古書店で偶々目にし、子供の頃に見たアニメの懐かしさもあって、手に取った。
そして、子供の頃はさすらいのスナフキンに憧れたものだが、人生後半に入った今は、それぞれのキャラクターが持つそれぞれの味わいを感じられ、なかなか面白く読むことができた。
また、それは、ムーミン・シリーズが当初児童文学として書かれたものではなく、作者自身も児童文学作家だったわけではない(ムーミン・シリーズ以降は、作者は大人向けの小説の執筆に注力した)ことと無縁ではないと思われ、機会があれば1作目なども読んでみたいと思った。
(2023年7月了)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年7月10日
読了日 : 2023年7月10日
本棚登録日 : 2023年2月21日

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