ぼくの村は壁で囲まれた―パレスチナに生きる子どもたち

著者 :
  • 現代書館 (2017年4月18日発売)
4.38
  • (26)
  • (17)
  • (7)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 225
感想 : 40
5

著者の高橋真樹氏は、自然エネルギー、国際協力、国際政治などのテーマを中心に取材、執筆活動を行っているノンフィクションライター。
私は本書を、行きつけの神田神保町・東京堂書店の平積みで目にし、迷わず即座に購入した。というのも、私は本年1月にエルサレムとパレスチナ・ヨルダン川西岸(ベツレヘム、ラーマッラー、死海沿岸など)を一週間ほど一人で旅してきたばかりで、そこで見、聞き、感じ、考えたことが、本書にまさに活字となっていたからだ。
著者は、パレスチナの問題を「世界の縮図」とし、「黙って見ているだけでいいのか?」と我々に問いかけ、「自分にも何かできることがあればやってみたい。そう思った方にまずチャレンジして欲しいことがあります。それは、「知ること」、「伝えること」、「行動すること」です」と語っているが、私は、「知る」ために現地まで行ってしまったのだ。
現地では、3宗教の聖地を抱くエルサレム旧市街や、イスラエルが第三次中東戦争で一方的に占領・併合した東エルサレムは言うまでもなく、本書でも取り上げられている、イスラエルとパレスチナを分かつ分離壁、そのボーダーを越えるための検問所(チェックポイント)、イスラエルがパレスチナ地域に作った入植地、ホロコーストの犠牲者を慰霊する博物館ヤド・ヴァシェム、ユダヤ人が再び全滅を繰り返さないという固い決意を語り継ぐマサダ遺跡、世俗的な人々と対立を深める超正統派のユダヤ教徒(の住む街)なども訪れ、様々なことを肌で感じた。
本書では、一般の個人旅行者ではなかなか足を踏み入れることができない、ヨルダン川西岸やガザ地区の街・難民キャンプで今何が起こっているのかを、取材に基づいて詳しく紹介していることに加え、極めて複雑な当地の歴史・現状を、地図や写真を交えて、わかり易く整理・説明しており、パレスチナの問題をまず「知る」ためには、最適の入門書と言えるのではないだろうか。
(自分の旅の前に発刊されていれば、大変参考になったであろう。。。)
(2017年4月了)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年4月28日
読了日 : -
本棚登録日 : 2017年4月23日

みんなの感想をみる

ツイートする