青の炎 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2002年10月23日発売)
3.87
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本棚登録 : 15896
感想 : 1690
4

初めての貴志祐介さん作品。
〔倒叙推理小説〕という種類を初めて知り、犯人側からの視点で物語を読み進めていくのも新鮮で面白かった。

 主人公は母子家庭で妹を含めた3人で仲良く暮らす普通の男子高校生:櫛森秀一。その平和な日常に突如、母親の元夫:曽根が介入してきて状況は一変する。
 母と妹を守るために、秀一は曽根の抹殺を計画する。完全犯罪を成功させるために準備に駆け回る姿からは、頭がいいのはもちろんだが、母妹思いの優しさと責任感の強さが感じ取れる。
 
 完全犯罪を成し遂げたかと思いきや少しずつボロが出て、警察も真相に近づいてくる。読み進めながら秀一の心境がそのまま伝わってきてハラハラドキドキした。
秀一の身に沸き上がる繊細な感情の起伏が、読んでいて切なくもあり苦しくもなった。
 犯罪は絶対にいけないし裁かれるべきなんだけれど、同級生の秀一への関わり方を見ても、秀一が周りに好かれていた人物であったことが伝わってくる。

 秀一のような優しい青年が究極の選択をしなければならなかったことが悲しいし、最後も切ない。
正論だけでは片づけられない考えさせられる物語だったけれど、手に取ってよかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2022年5月6日
読了日 : 2022年4月29日
本棚登録日 : 2022年1月31日

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