フレデリック―ちょっとかわったのねずみのはなし

  • 好学社 (1969年4月1日発売)
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「ちょっとかわったやつ」は何のためにいるのか

いきなり自分語りで申し訳ないが、私の親族はいわゆる「ちょっとかわったやつ」(明言は避ける)ばかりで、
きちんと診断書を受け取っている者も多い。
だいたい皆アーティストであり、企業戦士としてはとてもやっていけない人々ばかりだ。私も含め。

さて、この「ちょっとかわったやつ」は一定の割合で生まれるらしいが、
一体何のために生まれてくるのか?
少し研究文献も漁ってみたが、どうやら一定の環境下で彼らの存在とその特殊な能力が集団を救うこともあるらしかった。

さて、フレデリックの話に戻るが、
フレデリックは冬に向けて一般的に必要とされる勤労(食糧集め)をせずに、
日がな一日ぼんやりと日向ぼっこをしているだけである。
なぜ働かないのか?と聞かれても、常人には凡そ理解できない理屈を説明するだけなのであった。

この物語の総括は「やっぱりアートって大事だよね」「生きるには心の栄養も大事だよね」というところに集約されることが多いようだが、
私自身としては、冒頭の「ちょっとかわったやつは、なぜ生まれるのか」についての答えの一端を見た気がした。
フレデリックは、おそらく他のねずみほど効率よく食糧集めをすることはできないだろう。
きっと彼は彼の心の声に従って、自分にできること、そして自分にしかできないことをしたのだ。
ちょっとかわったやつを代表して言えば、(本人に自覚があるかはともかく)フレデリックは飢え死にする可能性もあった。
ちょっとかわったやつを貫くのは、命懸けである。

自分自身の魂を信じて輝かせること、それがちょっとかわったやつに課せられた使命である。常人に変装し、できもしない勤労をする前に。振り切る勇気が出なければ、ほんのちょっと食糧を集めながらでもいい。
暫定、「ちょっとかわった」子どもに贈りたい絵本ナンバーワン。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年5月4日
読了日 : 2023年5月3日
本棚登録日 : 2023年5月3日

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