20数年ぶりに再読した本。
ロス五輪が開催された年、華やぎとは縁のない下高井戸の地にうらぶれた遊技場がオープンした。メインアトラクションはペンキの剥げた錆だらけの回転木馬。他の施設も倒産した地方の遊園地の不要品ばかり。客は全く入らない。好景気に湧き、バブルへと世の中が絶頂へ向かおうとしているときに、ひっそりと産声をあげたこの廃墟のような遊技場。しかし、この遊技場こそ、後に日本中を狂乱の渦に巻き込み、内乱へと導いたゼウスガーデンの前身だった。
子供の夢を形にした遊園地は数あれど、大人の欲望を実現させる遊園地はかつてなかった。プリンセスになりたいとか、ヒーローになりたい、なんて夢は長ずれば覚める。そんな夢をテーマにするのは三流だ。ジャンヌ・ダルクになりたいとか、チェーザレボルジアになりたいとかの夢をかなえることができる場所、それがゼウスガーデンだ。
ヒーロー体験もできれば、臨死体験もできる。疑似恋愛もできるし、疑似心中もできる。創造主になって数々の奇蹟を起こす体験もできれば、ゾンビになって人を食べることもできるし、ゾンビに食べられる体験もできる。際限のない人間の欲望をすべてを飲み込み巨大化するゼウスガーデン。
地方の弱小遊技場を次々とその配下におさめ版図拡大する。その予算規模はアフリカや中南米の小国の国家予算を凌駕し、遂には日本国からも自治権を獲得する。その中枢で各地方の運営方針を決定する機関が元老院だ。元老院は僭主の登場を拒否する。ゼウスガーデンはあくまで共和制下での発展を目指した。しかし肥大化した組織には必ず腐敗が蔓延る。各派閥の抗争、地域間の主導権争い。硬直化した元老院体制では事態を打開できない。そして遂に皇帝が誕生する。はたしてその栄枯盛衰の結末やいかに。
はまる人にはドツボにはまる圧巻の500ページ。
- 感想投稿日 : 2011年6月19日
- 読了日 : 2017年4月11日
- 本棚登録日 : 2011年6月19日
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