ゼウスガーデン衰亡史 (ハルキ文庫 こ 5-1)

著者 :
  • 角川春樹事務所 (1999年11月1日発売)
3.77
  • (13)
  • (14)
  • (18)
  • (0)
  • (2)
本棚登録 : 123
感想 : 12
5

 20数年ぶりに再読した本。


 ロス五輪が開催された年、華やぎとは縁のない下高井戸の地にうらぶれた遊技場がオープンした。メインアトラクションはペンキの剥げた錆だらけの回転木馬。他の施設も倒産した地方の遊園地の不要品ばかり。客は全く入らない。好景気に湧き、バブルへと世の中が絶頂へ向かおうとしているときに、ひっそりと産声をあげたこの廃墟のような遊技場。しかし、この遊技場こそ、後に日本中を狂乱の渦に巻き込み、内乱へと導いたゼウスガーデンの前身だった。


 子供の夢を形にした遊園地は数あれど、大人の欲望を実現させる遊園地はかつてなかった。プリンセスになりたいとか、ヒーローになりたい、なんて夢は長ずれば覚める。そんな夢をテーマにするのは三流だ。ジャンヌ・ダルクになりたいとか、チェーザレボルジアになりたいとかの夢をかなえることができる場所、それがゼウスガーデンだ。


 ヒーロー体験もできれば、臨死体験もできる。疑似恋愛もできるし、疑似心中もできる。創造主になって数々の奇蹟を起こす体験もできれば、ゾンビになって人を食べることもできるし、ゾンビに食べられる体験もできる。際限のない人間の欲望をすべてを飲み込み巨大化するゼウスガーデン。


 地方の弱小遊技場を次々とその配下におさめ版図拡大する。その予算規模はアフリカや中南米の小国の国家予算を凌駕し、遂には日本国からも自治権を獲得する。その中枢で各地方の運営方針を決定する機関が元老院だ。元老院は僭主の登場を拒否する。ゼウスガーデンはあくまで共和制下での発展を目指した。しかし肥大化した組織には必ず腐敗が蔓延る。各派閥の抗争、地域間の主導権争い。硬直化した元老院体制では事態を打開できない。そして遂に皇帝が誕生する。はたしてその栄枯盛衰の結末やいかに。


 はまる人にはドツボにはまる圧巻の500ページ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年6月19日
読了日 : 2017年4月11日
本棚登録日 : 2011年6月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする