米国で古典的ノンフィクションライティングの指南書ということである。無駄に修飾する形容詞や副詞、曖昧な表現の排除とか能動表現の使用といった、前半は英語の文章に対する指摘がありますが、根本的には日本語にも共通する簡潔に、というメッセージが読み取れる。
冗長で、しかも小難しい鼻持ちならない気取った表現なんてものは、不必要なのだ。
これは理解したつもりでも、自分の文章に自信がないからだろうどこかでみたような表現を借りてきて補完してその自信なさを隠してしまおうという浅ましさはあるあるですよね。
ノンフィクション作家としての心得でもあり、私的な回顧録なんかにも通ずるのは、自分の言葉・自分が良いと思うことを素直に表現すること、かつ有体なことではなく微に入り細を穿つような個人的な体験を披露することが良い作品となる条件なのだ。他人に迎合するような文章は退屈に感じられるし、逆に共感を起こさない。
第Ⅳ部の心構えの章で、作家とは大胆さと活力と陽気さが必要だ、たとえ良い気分ではなかったとしてもというコメントがあるが、これはその他仕事や人生にも応用すべき信条。つまりは、自分で自分を奮い立たせて向き合わなければ、決して良いものは生まれないし他人に興味を持ってもらえるものとはなり得ない。自分のストーリーを披露するのだから、そこに魅力的な感触がないとそりゃそうだよね。自戒自戒。
後は、一般的で広く大衆に広まっていることの二番煎じをつらつら述べるのではなく、対象となるテーマで実際に当事者と関わっている人へのインタビュー、本音なんかを拾いにいく、そんな気概も大切なのだ。その中でも、話題を広げすぎずに要所だけを的確に簡潔に魅力的に。
物書きではありませんが、相当な懊悩と挫折と後悔と孤独などなど精神的にまいってしまう職業なのではないかなと、そんなリスペクトを胸に抱きます。
- 感想投稿日 : 2022年6月4日
- 読了日 : 2022年6月4日
- 本棚登録日 : 2022年5月19日
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