オデュッセイア 下(ホメロス) (岩波文庫 赤 102-5)

  • 岩波書店 (1994年9月16日発売)
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英雄の帰還、そして復讐。劇的に描かれる、悪漢勢の醜態と家族や家臣との絆は、数千年の古さを感じさせない。

主に冒険譚だった上巻から一転、主要人物が故郷イタケに集結し、本作の悪役となっている求婚者たちと対決するお話になっていく。ほとんどの舞台がオデュッセウスの自宅である屋敷となり、本来の主人自らが正体を隠して悪人成敗の計略をめぐらせる、というのが面白さの軸。エンターテイメントとしてシンプルな構成ながらも、人間味あふれるキャラクターと勢いのある筋書きは、紀元前の作品ということを忘れるほど、現代の我々にも魅力的なものであるといえる。「イリアス」上・下巻から順に読んできて本巻が一番面白かったので、途中で挫折せずによかったと思った。

終盤で見えてくる、アガメムノンの妻(またはヘレネ)とオデュッセウスの妻という対比は、そのまま「イリアス」と「オデュッセイア」との対比ともいえるかもしれない。裏切りと憤怒、そして貞節と高潔さといったところか。しかし20年ぶりでも超絶美女なオデュッセウスの妻の魅力とは……。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年10月17日
読了日 : 2022年10月15日
本棚登録日 : 2022年3月17日

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