本作の原題:Thrice Upon A Time は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の英題に引用された。
過去にメッセージを送ることができるマシンが完成した……という、それ何てシュタゲ?と今の若い人なら言いたくなるようなオープニング。2010年を舞台に1980年に出版されたホーガン節の時間移動SF。ホーガンといえば真っ先に思い浮かぶのが『星を継ぐもの』。これぞSF、というセンス・オブ・ワンダーとミステリー的な謎解き要素を併せ持った面白さは本作でも健在だ。
こういった、過去に干渉して歴史を改変するという物語は、改変前の世界と改変後の世界が分岐してそれぞれが継続していくというパターンと、改変前の世界は消滅して完全に書き換わってしまう、というパターンがある。本作は後者であり、「世界線の書き換え」によって生じる様々な問題が、思考実験のように展開されて非常に面白い。たまたま人類の絶滅につながる2つのまったく別々の重大事件が発生し、過去にメッセージを送れるマシンによって救われるか?というのはちょっとわざとらしい展開にも感じるが、必然的に生じるタイムパラドックスも含め、このテーマに関する普遍的な問題を提示していて最後まで興味深く読める。
美しいラブロマンスでしめる、読後感の良さはさすがのホーガン。あちらこちらで使い古されてしまった時間移動もののネタは新鮮味にかけるかもしれないが、今もって一読する価値のある名作なのは確かだと思う。
新エヴァについては、なるほど……と今さら気づいた(英題は気にしてなかったニワカ)。
- 感想投稿日 : 2022年8月29日
- 読了日 : 2022年8月26日
- 本棚登録日 : 2021年9月4日
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